社会復帰へのリハビリを兼ねて文献の要約をやってみることにした。
三日坊主にならないように自分のペースで続けてみたいと思う。
文献要約の1本目は
「日本緑化工学会誌 (36)No,4, 475−479,(2011)
オニグルミのアレロパシー活性がニセアカシアの実生の初期生長に及ぼす効果」
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsrt/36/4/475/_pdf/-char/ja/
【導入】
蜜源植物として中国から導入されたニセアカシアは環境省の要注意外来生物に指定されている。
河畔など湿った場所を好み群落をつくるため、イネ科多年生草本群落やヤナギ類群落ではニセアカシアの侵入で植生図が塗り替えられてしまうこともある。
しかしオニグルミ群落においてはニセアカシアの侵入が極めて少ないことが確認されている。
これはオニグルミによるアレロパシーが関与していると考えられる。
オニグルミの(葉、根、枝、偽果)にはユグロンが含まれている。特に根には高濃度のユグロンが含まれている。
ユグロンの純品を使用した実験ではニセアカシアの初期生長を50%阻害することが報告されているが、野外条件下での効果は検証されていない。
【方法】
(混植実験)
混植実験を用いたアレロパシー活性の評価と根圏土壌法を用いたアレロパシーの検定を行った。
混植実験では樹高約11cm(30日間栽培)まで育てたニセアカシアの苗と樹高75cm(2年10ヶ月間栽培)まで育てたものを用いた。
混植区と対照区の2つを設けて、混植区では7本のニセアカシアと1本のオニグルミを同時に移植して栽培した。
苗木はオニグルミを中心にそこから8cm離れた周囲に7cm間隔でニセアカシアを配置した。
根の物理的な競合を避けるため、ニセアカシアは約5cm、オニグルミは15cmの深さに根を移植した。
栽培に使用した土壌は栄養分を含まない石英砂を用いた。
栽培期間中、毎日水を与え、ハイポネックス原液6-10-5を500倍希釈して3日に1回与えた。
16℃~22℃の栽培温度で45日間栽培したあと、ニセアカシアを収穫して乾重量を測定した。
解析には乾重量が最低と最高の個体を除いた5個体を対象とした。
実験では同一処理区について3反復で行った。
また実験の終了と同時に栽培に使用した土壌中のユグロンを定量した。
(根圏土壌法)
根圏土壌法ではオニグルミの根が他の植物の生長に影響を及ぼす範囲を明らかにすることを目的に実施した。
オニグルミを6ヶ月間栽培して土壌を採取した。
既往実験と同じ培養土(クレハ園芸培養土)を用いた。
土壌の採取は空中振とう法に従い、オニグルミをポットから取り出して根を軽くほぐした後、軽く降って落ちた土壌を「根域土壌」、根の表面に付着していた土壌を「根圏土壌」と定義した。
採取した土壌は根毛を除去した後、6穴マルチディッシュの各穴に乾土3gになるよう根圏土壌4.24gを入れた根圏土壌区と根域土壌3.88gを入れた根域土壌区を作った。
各穴に寒天溶液を加え、土壌と混合して固まらせた。
寒天が固まった後、さらに寒天を加え、土壌をサンドイッチ状に挟み込んだ状態で再び固まらせた。
この寒天培地上に検定植物としてレタスと10分間の濃硫酸処理を施したニセアカシアの種子を1穴につき5粒づつ置床した。
6穴マルチディッシュはフタをしてテープで密閉して25℃の暗黒下で3日間培養した後、レタスとニセアカシアの幼根長と下胚軸長を測定した。
解析には幼根長と下胚軸長の値が最高と最低の個体を除いた3個体を対象とした。
実験では同一処理区について5反復で行った。
また土壌を入れないマルチディッシュを対照区とし、対照区に対する各土壌の値を阻害率として求めた。
【結果と考察】
(混植実験)
乾重量は対象区に対して、混植区は約50%の値となった。
混植区ではニセアカシアの一部の根で先端が褐色に変色し、ネクロシスを起こしていた。
混植区の土壌ではユグロンのピークが検出された。
混植区でのニセアカシアの量および根の褐色への変色の2点から、オニグルミの根から放出されたユグロンによる効果と考えられた。
オニグルミの根から放出されるユグロンはニセアカシアの初期生長を阻害する量が土壌中に保持されていることがわかった。
(根圏土壌法)
ニセアカシアの発芽率は全ての処理区で100%を示した。
レタスの発芽率は対照区と根域土壌区で100%、根圏土壌区で96%を示した。
ニセアカシアの幼根長は対照区の23mmに対して、根域土壌区は17mm、根圏土壌区は13mmと低い値を示した。
阻害率は根域土壌区で26%、根圏土壌区で43%となった。
下胚軸長も同様の傾向を示した。
レタスの幼根長は対照区の41mmに対して、根域土壌区は35mm、根圏土壌区は29mmと低い値を示した。
阻害率は根域土壌区で15%、根圏土壌区で29%となった。
オニグルミによる阻害率はニセアカシアとレタスの両方で根圏土壌区の方が高かった。
このことから土壌中でのオニグルミのアレロパシー活性は、オニグルミの根の付近で高く、根から離れると低下すると考えられる。
レタスの幼根長の阻害率について、アレロパシー活性を持つ6種の外来種では次のようになる。
サボン45.3%、オジギソウ33.1%、パラミツ25.1%、タカヤサン16.8%、ホウオウボク13.6%、アカギ0%
オニグルミは29%であることから、比較的高いアレロパシーを持つことがわかる。
【おわりに】
ニセアカシアの初期生長を阻害する量のユグロンが土壌中に保持されていることがわかった。
根圏土壌法によって、オニグルミの根の近くの土壌ほど、ニセアカシアの初期生長を阻害する効果が高いことがわかった。
このことからニセアカシアがオニグルミ林へ侵入しにくい要因のひとつとして、オニグルミのアレロパシー活性が関与していると考えられた。
□ 用語 □
ニセアカシア(ハリエンジュ)
http://elekitel.jp/elekitel/nature/2002/nt_07_niseak.htm
(ゑれきてる 自然を読む 樹木の個性を知る)
オニグルミ
http://elekitel.jp/elekitel/nature/2003/nt_14_onigurumi.htm
(ゑれきてる 自然を読む 樹木の個性を知る)
ユグロン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%B3
(ウィキペディア)
アレロパシー
http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/inovlec2004/1-3.pdf
(農業環境技術研究所)
ネクロシス
http://www.jppn.ne.jp/miyazaki/200/500/yakugai/232.pdf
(宮崎県病害虫研究所)
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